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2016.03.02ndjc情報

【レポート】「映画監督のつくり方2016」第2回/羽生敏博監督『good-bye』編  

2月3日(水)ユーロスペースで トークイベント付上映「映画監督のつくり方2016」第2回/羽生敏博監督『good-bye』編 が開催されました。ndjc2014完成作品 吉野監督エンドローラーズ』、羽生敏博監督『good-bye』が上映され、上映後には石坂健治(日本映画大学教授、東京国際映画祭アジア部門ディレクター)、北條誠人(ユーロスペース支配人)、羽生敏博監督によるトークショーが行われました。

2月3日(水)21:00開映
第2回/羽生敏博監督「good-bye」編
『エンドローラーズ』『good-bye』の順に作品上映後、監督とゲストによるトークセッションを行います。
◆トークテーマ:「若手監督が世界へ羽ばたくために」
◆登壇者:石坂健治(日本映画大学教授、東京国際映画祭アジア部門ディレクター)、北條誠人(ユーロスペース支配人)、羽生敏博監督
◆会場:ユーロスペース

 

(左から)司会、石坂健治(日本映画大学教授、東京国際映画祭アジア部門ディレクター)、羽生敏博監督、北條誠人(ユーロスペース支配人)

司会:本日は羽生監督『good-bye』編ということで、まずは『good-bye』をご覧になった感想をお聞かせください。

石坂氏(以下石坂):安藤玉恵さんをはじめ、子役たちもとてもうまいですよね。そしてラストシーンを観て、この監督はすごく険しい道をあえて目指しているんだなと感じました。

北條氏(以下北條):感想は、よく貧困を映画にしたなということです。悲しいでしょ、悲惨でしょ、という押しつけではなくて、一つの物語としてみせたというところにひたすら感嘆しました。どのようにこの物語を思いついたのでしょうか?

羽生:きっかけはあるテレビでやっていたドキュメンタリーです。母娘がネットカフェで暮らしているというドキュメンタリーだったのですが、映画としての要素というかヒントがある、これをフィクションとしてやりたいと思いました。この母娘に対して、味方でも敵でもなく、限りなく中立の立場で対象を見つめるというところを意識して撮りました。

 

 

 

-若手監督が世界へ羽ばたくために

司会:本日のトークテーマは<若手監督が世界へ羽ばたくために>ということで、おふたりは日ごろから若手監督の作品をご覧になっていると思いますが、海外と日本の若手監督についてどのようにお考えでしょうか。

石坂:昨年開催された東京国際映画祭の私が担当している<アジアの未来>部門で、内モンゴル出身の女性監督デグナーさんの『告別』という作品が賞を獲得しましたが、実はその作品は北京電影学院という映画大学の大学院の卒業制作だったんです。応募の時点ではその情報を知りませんでしたが、それでもその時から「これはすごい」と思っていました。つまり学生の卒業制作かどうかなんて関係なく、その作品は素晴らしかったんです。一方で日本の学生の作品も観ますが、はっきり言うと「日本、これはまずいぞ」と。大半が「惚れたハレた、振った振られた」を半径3メートル以内の目線で語るものばかり。ただ、海外の映画の学校というのはかなりプロの手が入るので、そういう意味では単純に比較をするのは難しいですが、それでも海外の若手監督の作品については圧倒されっぱなしです。

北條:ここ数年、カンヌやベルリンの国際映画祭に行って思うのは、以前に比べて日本映画が減っているということです。カンヌなどでも、ある程度決まった方はピックアップされるけれども、その次の世代というのがいない。翻ってみると、海外から日本の監督や作品というものは必要とされているのか、ということではないでしょうか。

司会:羽生監督は、昨年『good-bye』で自身初の海外映画祭(カイロ国際映画祭)を体験されましたが、いかがでしたか?

羽生:観終わったあとに声かけてくれるのですが、「サンキュー」とかそのくらいの会話しかできず、事前に英語の特訓をしたり、現地にも通訳の方がいたのですが、もっと上手く、もっと深く英語で話せたならもっと展開があったかもしれないのに…その芽を自分で摘んでしまったという感じでした。

石坂:英語主義者じゃないけど、世界に羽ばたくため、若手監督に必要なサバイバルツールの第1位が「英語」というくらいに考えてもいいかもしれないですね。十分条件ではなく単に必要な「ツール」。

 

 

-日本の若手映画監督へ

北條:若手監督に求めているのは新しい表現方法、オリジナルの表現です。そのオリジナルの表現力が強ければ強いほど、外に出ていける可能性が高くなると思います。そして、作り手は、上映する側の人間と一緒に何か話をしたり、動かしていった方がいいだろうと思います。やはり、自分の作品を上映できる可能性や機会を持てた方が強くなれる。今のインディペンデントの映画の作り方というのは、妙に小さくなっていて、あまり外の人間の意見は取り入れずに、仲間だけで映画を作っていくことにエネルギーを費やしているように思えます。外の人に観てもらって、自分たちの映画の作り方をシビアに見つめる機会を持った方がいいのではないでしょうか。まず観てもらわないと始まらないですし、観てもらって強くなっていくのだろうと思います。

石坂:私は、まずは現状認識ではないかと思います。戦後の日本は、経済も発展して幸せにやってきた。その一方で、アジアにはかつて植民地として支配国の言葉を使うことを余儀なくされていた国もあった。そのような国の若手監督は、今海外映画祭で英語を話せます。今はグローバルな世の中ですから、それが武器になる。これは日本という国が日本語で済んでいたこと、幸せであったことと裏表の関係にあるということでもあるので、そういったことも自覚したうえでどうするのかだと思います。また、日本にはこれまでに映画の黄金時代があって、フィルムの時代があって、その時代の映画がきちんと保存されているという素晴らしい環境がありますが、今はアジアの中にもフィルムを触ったことがない若手監督がいっぱいでてきて、フィルム時代の撮り方を知らないということが逆にデジタルならではの斬新な発想を生み出す武器になっているということもあると思います。日本の中でも良いところと悪いところが複雑に絡みあっている…まずはそういった現状把握が必要で、そのうえでどうするかというのは、次のステップかなと思います。

 

作品に関するご質問や感想などもたくさんいただき、盛況のうちに終了しました。
ご来場いただきました皆さま、ありがとうございました!

 

★★【レポート】「映画監督のつくり方2016」第1回/吉野耕平監督『エンドローラーズ』編はこちら

 

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