浅野監督 だめな大人たちの中で、子どもはどのように生きるのか。DVや家庭崩壊などの話を聞く中で、「大変だろうな、今の子ども」と考え始めました。僕は役者さんが好きなんです。みんないい顔をしていて、見ているだけで幸せな気分になれるんです。役者さんがお芝居をする中でリアルな感情が生まれてくればいいなと思いながら、特にアキラ君を見つめて作っていきました。 私市夢太 今回の役は難しいところもありましたが、自分に合う役だったみたいで、スムーズに演じることができ楽しかったです。観ていただいた皆さんに、これからのアキラを応援したいという気持ちになってもらえたらうれしいです。 斉藤陽一郎 無職でだめな叔父さんの役をやりました。監督からは現場で、「そのままでいいです、そのままでいいです」と言われまして、監督がいかに僕をだめな人間だと思っているのか思い知らされました。でも、私市君にはものすごく愛を持った演出をしてました。皆さんに楽しんでいただけたらうれしいです。 石村みか スタッフの皆さんから、ものすごく細かなアドバイスをいただくことができました。アットホームな現場で、とても幸せな数日間を味わうことができました。 鈴木卓爾 父親役はこれまでも何度か演じたことがありますが、いつも子どものようなキャラクターになってしまいます。今回もアキラの方が大人に見えてしまい、「これでいいのか?」と思いながら演じてましたが、観てみると、大人とか子どもとか関係なくちゃんと映画として映っていました。 林摩耶 自分が出演しているので客観的に観られていないのかもしれませんが、感動しました。できるだけたくさんのところで上映され、多くの人に観てもらえればいいなと思っています。 浅野監督 これからも頑張ります、としか言いようがないです。今後も、シンプルで力強い作品を作っていきたいと思います。どこかで名前を見かけたら、ぜひよろしくお願いします。
金井監督 35ミリフィルムで撮れると聞いたとき、35ミリフィルムには“一瞬を収める”というイメージがあったので、「子どもを撮りたい」と思い、脚本を書き始めました。ただ、初稿が甘かったせいで脚本の直しが大変で、バルト9がすごく遠く感じられました。でも、それによって撮りがいのある本になり、濃い日々を過ごすことができました。 辻香緒里 「家族っていいな」と思いました。そして「母は強くなければいけない」と、今日は自分に言い聞かせるように観ていました。実際自分には2人の子どもがいるので、その子どもがいなくなることを想像しながら演じました。 草野康太 35ミリフィルムで撮影される機会は、だんだん少なく貴重なものになっています。今回、とても良い緊張感の中でやらせていただきました。この役はとても重たいところもあったのですが、自分ではあまり重く受け止めすぎないように心がけました。監督は僕より年下ですが、すごくしっかりしていてどっしり構えていたので、やりやすかったです。 金井監督 でも、お昼のお弁当、一口も食べられなかったんですけどね。もっと強くならないといけないと思いました。これからもまた今回のように、役者さんと一緒に共同作業でたどり着けるような作品を作りたいと思います。人間ドラマ ― 人間が生きて感情が動く脚本を書き、監督をしていきたいです。
佐々木史朗スーパーバイザー この5本の作品が完成に至るまでには、ずいぶんいろいろなことがありました。中には、最初提出されたシナリオからまったく姿かたちが変わってしまったものもあります。変わっていく過程で、彼らは相当手厳しい経験をしたと思います。激しいやりとりの結果、シナリオが出来上がり、そのシナリオをベースにして彼らは映画を作りました。そして、今日初めて皆さんに観ていただくことができたわけです。 このような形で、努力した結果がスクリーンに映し出され観客の皆さまに観ていただける、こんな幸福は実はあまりありません。ここまでやってきたのは彼ら5人ですが、これから先は、映画は観てくださった観客の皆さんのものになります。鈴木清順監督が「良い映画とか悪い映画というのはないのだ。運の良い映画と運の悪い映画があるだけだ」と言っていましたが、このように完成して観客の皆さんのものになっていく映画が、運の良い映画であり続けてほしいと願っています。 もちろん、作り終わった彼ら自身には、これからも作り手としての責任は残ります。厳しい講評もしっかり受けとめてください。そして早くプロになって、もう1度どこかで出会える日を楽しみにしています。